都心からのアクセスが便利な川崎市高津区にある帝京大学医学部附属溝口病院です。医師・看護師を募集しています。

診療科のご紹介

耳鼻咽喉科の紹介・対象疾患

鼓膜再生外来の案内

 

帝京大学医学部附属溝口病院では、鼓膜に穴があいて難聴になる穿孔性中耳炎に対して、日帰りで鼓膜再生治療を行う「鼓膜再生外来」を開設しています。

 

担当医師 : 白馬伸洋

外来時間:金曜日 14:00~17:00


1) 本治療法の内容

慢性中耳炎、平手打ちなどの外傷、長期間の鼓膜換気tubeの留置により、鼓膜に永久的な穴があいてしまうことがあります。穴が自然に閉鎖しない場合は、ご自身の耳の後ろの筋肉の膜(筋膜)を採取して、鼓膜の穴を閉鎖する方法が広く用いられています。この方法は耳の後ろの皮膚を切開しなければならず、時には入院する必要もあります。

当院で行う鼓膜再生治療は、鼓膜再生の足場としてシリコン膜で支えられた人工コラーゲンを鼓膜の穴に挿入し、鼓膜の再生を促進する作用を持つ薬を加えることにより、日帰りで鼓膜の穴を閉鎖させる治療です。現在は、人工コラーゲンの代わりに2019年から健康保険適応となった、ゼラチンを用いた「リティンパ」による鼓膜再生治療も同時に行っています。

 

鼓膜再生治療の経過例.gif

 

 

2) 本治療の方法

①      麻酔は、麻酔薬を染み込ませた小さな綿球を鼓膜の穴の上に約15分間置くだけです。注射などの必要はありません。

②      硬くなった鼓膜の穴の周りの部分を切除して新鮮化します。この作業で鼓膜再生が促されます。

③      シリコン膜で支えられた人工コラーゲンを鼓膜の穴に挿入し、皮膚再生作用の働きを持つ薬を添加します。人工コラーゲンはシリコンの膜で支えられていますので、糊などを用いなくてもコラーゲンはしっかり穴に固定されます。ゼラチンであれば、あらかじめ皮膚再生作用の働きを持つ薬をゼラチンに添加した状態で鼓膜の穴に挿入し、固定には血液製剤の糊を用います。

 

3) 鼓膜再生治療の特色

本治療は担当の白馬医師が2001年から開発を進め、2003年(資料1リンク)と2010年(資料2リンク)に英語論文に発表した方法です。現在までに、前任の大阪赤十字病院(日経産業新聞2008年9月4日掲載)(資料3リンク)と愛媛大学医学部附属病院(愛媛新聞2009年12月13日掲載)(資料4リンク)において、鼓膜に穴があいている1000人以上の患者様に対してこの方法で治療を行ってきました。人工コラーゲンはシリコン膜で鼓膜の穴に固定しますので、血液製剤の糊を使用しないのが特徴です。

同時にゼラチンを用いた鼓膜再生治療を行っていますが、こちらは鼓膜の穴の大きさに合わせる必要がないため、簡便に皮膚再生作用を持つ薬を添加したゼラチンを挿入することが可能です。

どちらの方法でも、保険診療で認められる4回までの施行によって90%以上の鼓膜の穴が閉鎖します。

  

4) 受診の方法

担当の白馬医師の初診外来(水曜日、金曜日 8:30~11:30)を受診してください。かかりつけ医あるいはお近くの耳鼻咽喉科医の紹介状をお持ち下さい。外来予約は、平日14時より17時までの間に当院予約センター:044-844-3277へ直接お電話ください。

 

5) 患者さまの負担

本治療は健康保険診療(4回までの施行)が認められるようになりました。診察料、検査料に加えて、鼓膜穿孔閉鎖術(1500点)+薬材料の3割負担です。

 

 

 中耳炎・真珠腫外来の案内


帝京大学医学部附属溝口病院では、鼓膜再生治療では治療が困難な難治性の中耳炎、周囲の骨破壊から顔面神経麻痺や脳炎などの重篤な合併症を引き起こす中耳真珠腫に対し、外耳道本来の形を温存する「外耳道後壁保存型(クローズ法)」中心の耳の手術(鼓室形成術)を行っています。

また、乳頭洞削開術を必要とせず、耳小骨の動きが悪い鼓室硬化症を合併する陳旧性の中耳炎や、先天性の耳小骨奇形に対して、耳後部の皮膚切開は行わず、低侵襲に耳内からアプローチする「経外耳道的内視鏡下耳科手(TEES)」を行っています。

さらに、徐々に耳小骨の一つであるアブミ骨が硬化することで難聴が進行する耳硬化症に対して、ピストンワイヤーを挿入して聴力を改善する「アブミ骨手術」も行っています。

「外耳道後壁保存型(クローズ法)」「経外耳道的内視鏡下耳科手(TEES)」「アブミ骨手術」では、入院期間も1週間程度で、術後、耳内が乾燥するまでの期間も短いのが特徴です。手術までの耳処置と、術後の定期的なフォローを中耳炎・真珠腫外来で行っています。

 

担当医師:白馬伸洋 

外来時間:水曜日、金曜日 8:30~11:30


1) 対象疾患(難治性中耳炎、中耳真珠腫)の説明

穿孔性中耳炎でも病気の経過が長く、炎症を繰り返し、鼓膜の奥の中耳腔から乳突洞にかけて肉芽(不良組織)が蔓延している場合、抗生剤に抵抗性を持つ耐性菌が出現した難治性の中耳炎で耳漏を止める場合には、鼓膜穿孔の閉鎖だけではなく、中耳腔から乳突洞にかけての徹底的な清掃が必要となります。

また、中耳腔と鼻をつなぐ耳管の働きが悪いと、鼻から中耳腔に十分な空気を送り込むことが困難となり、空気が不足した中耳腔では鼓膜が奥に引っ張られ、一部凹む場所が生じます。その凹んだ場所に、皮膚と似た組織から耳垢の塊のような真珠腫が発生します。真珠腫は周囲の骨組織を破壊していきますので、音を伝える骨(耳小骨)が破壊されると難聴が生じ、さらに放置すると顔面神経麻痺や脳炎の原因にもなります。真珠腫の治療も手術によって徹底的に清掃することしかありません。

 

2) 耳の手術(鼓室形成術)の方法

真珠腫の手術は、大きく分けてオープン法とクローズ法の2つがあります。(それ以外に、オープン法の後に外耳道を再建する再建法やTEESを含めた経外耳道法があります。)

外耳道後壁削開型(オープン法)

真珠腫はほんのわずかでも取り残しがあると再発します。再発を防ぐためには、外耳道を大きく削れば死角が少なくなり、真珠腫が確認しやすい状態で手術が出来ますが、本来の外耳道とは異なる拡がった外耳道になるため、① 術後に定期的に耳鼻咽喉科で耳掃除をしてもらう必要がある、② 音楽のイヤホンや、年を取ってからの補聴器が合わせにくくなる、③ 中耳腔の形も変わるため耳が詰まった感じ(耳閉感)が生じる、などの問題があります。

外耳道後壁保存型(クローズ法)

一方、外耳道を削らないで保存するように手術を行えば、自然な形で外耳道が保存できるため、① 耳掃除のための受診が不要、② イヤホンや補聴器を装用するのに問題が無い、③ 自然な状態で聴こえが良い、などの利点がありますが、手術には高度な手技が求められます。

 

 

オープン法とクローズ法の模式図  

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3) 当院での鼓室形成術の特色

当院で鼓室形成術を担当する白馬医師は、年間300件以上の鼓室形成術を行っており、現在までに約5000件の手術経験があります。2022年と2023年に厚生省が発表したDPC(診療群分類包括評価)データに基づく病院別の慢性化膿性中耳炎や中耳真珠腫に対する鼓室形成術数では、2年連続で全国第1位の治療実績です。真珠腫に対する手術法の割合は、外耳道後壁削開型(オープン法)再建法を合わせて5%に対して、手技がより困難な外耳道保存型の手術(クローズ法)が80.7%です。また、2回に分けて行う段階的手術は8%以下です。術後1年以上経過した段階で、日本耳科学会が定めた聴力改善成功率は81.5%真珠腫再発率は3.0%でした。

外耳道を保存するための工夫は、手術中に内視鏡を用いて真珠腫の死角を無くすことや、真珠腫摘出時に真珠腫母膜の連続性を保ちながら、真珠腫が破壊した外耳道をそれ以上に削らないで、真珠腫底部を乳突洞側より外耳道側へ一塊に押し出す操作(Bottom push up法)を重要と考えています。この操作で行えば真珠腫遺残性再発予防になるばかりでなく、不要な外耳道削開を行わないため、1/3薄切軟骨を用いた外耳道の再建が強固となり、真珠腫再形成予防にもなります。

アブミ骨固着症に対してはアブミ骨手術を施行し、90%以上の成功率を得ています。さらに、高度感音難聴に対する人工内耳埋め込み術、外耳道閉鎖症に対する聴力改善を考慮した外耳道形成術など幅広く手術を行っています。

 

4) 受診の方法

担当医師の白馬医師の初診外来(水曜日、金曜日 8:30~11:30)をまず受診してください。かかりつけ医あるいは近くの耳鼻咽喉科医の紹介状をお持ちください。

外来予約は、平日14時より17時までの間に当院予約センター:044-844-3277へ直接お電話ください。

 

 

 

補聴器聴覚リハビリテーション外来のご案内

  

3ヵ月間毎週、医師・言語聴覚士・認定補聴器技能者が三位一体となって診療します。専門の言語聴覚士が患者さんと1対1で、補聴器を活用し音やことばに対する感度を高めるための新聴覚リハビリテーションを行います。また、補聴器を用いた難聴を伴う耳鳴の治療や難聴と関係する認知症予防も行っています。

 

補聴器聴覚リハビリテーション外来  :水曜日・木曜日(完全予約制)

医 師:白馬伸洋・山原康平・扇田秀章・浅井康德・樽井彬人

言語聴覚士 :三瀬和代・坂本璃彩

 

〇何故、補聴器は必要か?

老人性難聴:程度の差はありますが、加齢によって誰にでも起こります。音を感じる器官(蝸牛)や神経の老化現象による感音難聴で高い音から次第に聴こえにくくなり、ことばの聴き取り能力も低下します。難聴はコミュニケーションを妨げ、活力や社会性の低下を招き、うつや認知症との関連も報告されています。まだ有効な治療法はなく、補聴器が有効な手段となります。

耳鳴:難聴に伴う場合が90%を占めています。難聴によって脳に信号が届きにくくなり、それを脳が代償しようと過剰興奮して信号を増やすために発生します。十分に聴こえないストレスも耳鳴症状をさらに悪くします。補聴器で難聴を解決することにより耳鳴に対する不快感を軽減できます。

認知症:認知症のリスクは軽度難聴で2倍、中等度難聴では3倍、高度難聴では5倍高まると報告されています。難聴を放置せずに、積極的に補聴器を使用して脳に刺激を入れて活用させることが大切です。

 

補聴器聴覚リハビリテーションの特色

①  脳を補聴器の音に慣らす

脳を活性化させるためには十分な音刺激を入力する必要があります。しかし、長年難聴によって大きな音を聴いていない脳は、補聴器によって大きくなった音が非常に苦手です。

難聴がなければたくさんの音が聴こえていて、そのなかから自分にとって大事な音、無視していい音、というように脳が選択しながら聴いています。しかし、難聴になると脳の音を“仕分け”する機能が衰えます。そこで、補聴器の調整は、脳が大きさの変化に気付かないように少しずつ音を大きくして、3ヵ月間かけてその音に適応できるようにします。音をしっかり聴くことができるようにしながら、音を“仕分け”する力を高めます。

 

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➁  低下したことばの聴き取り能力を向上させる

感音難聴ではただ音が聞こえにくくなるだけではなく、音の鮮明さ(語音明瞭度)が低下します。語音明瞭度が低下すると、周囲の環境音に隠れてしまい聴き分けることが難しくなります。補聴器によって正常な聴こえに戻すことはできません。しかし、残った聴覚機能を活用する訓練よって、現状よりも聴き取りをより良くすることは可能です。

耳から届いた音を理解するのは「脳」です。「脳」が音を理解するまでには、①音に注意を向けて捉える、②集中する、③意識して聴く、④得られた音の手がかりを利用して言葉として理解する、という過程があります。少しでも聴き取りを良くするためには、こうした脳の情報処理能力を鍛える訓練も重要です。当科での聴覚リハビリテーションでは、「脳」における言葉の処理能力や雑音と分けて聴いて理解する力を高める聴取訓練を行います。

 

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〇受診の方法

補聴器聴覚リハビリテーションが必要かどうか診断するための専門予約枠(月曜と金曜の午後)を設けております。事前にこの外来の受診が必要です。予約は平日9時から16時30分までの間に当院予約センター(044-844-3579)へお電話いただき、「補聴器診断のため」とお伝えください。

 

 

対象疾患

 特 色
耳疾患

外耳炎、中耳炎(急性中耳炎、慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎、滲出性中耳炎など)、めまい(メニエール病、良性発作性頭位めまい 症、前庭神経炎など)、難聴(耳硬化症、外リンパ瘻、突発性難聴など)、耳腫瘍(聴神経腫瘍など)、耳外傷(側頭骨骨折など)、など

※感音難聴に対して補聴器適合や人工内耳埋込術

鼻疾患 アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎(ちくのう症)、嗅覚障害、鼻出血、鼻中隔彎曲症、肥厚性鼻炎(鼻閉)など
のど疾患 扁桃疾患(扁桃炎など)、声帯ポリープ、咽頭喉頭炎、咽頭喉頭異物、咽喉頭異常感症など
顔面疾患 顔面神経麻痺など
舌・口腔疾患 口腔腫瘍(歯原性を除く)、ガマ腫、嚥下障害、舌炎、口内炎、口腔白班症など
唾液腺疾患 唾石、耳下腺腫瘍、顎下腺腫瘍、唾液腺炎など
頚部疾患 甲状腺腫瘍(甲状腺癌など)、頚部リンパ節疾患、その他頚部腫瘍、頚部のう胞性疾患(正中頚のう胞、リンパ管腫、側頚のう胞)、 上皮小体腫瘍など
音声・言語疾患 音声障害(声がれ)、構音障害に対するリハビリテーション